忘れた頃にやって来る!
相続税の税務調査の推定要件とは
相続税の税務調査は通常申告を終えて1~2年後に行われる。税
務調査が実施されると、申告漏れ等が指摘される非違割合は 80%
以上と言われ、実際に昨年発表された相続税の実地調査事績(令和
4年度)でも申告誤りは約 86%に上り、指摘された1件当たりの追
徴税額は 800 万円を超えている。
相続税の税務調査の対象要件については国税局が公表している
わけではないが、いくつかのパターンを推測することはできる。そ
の一つが名義預金と贈与。家族間のお金の流れで、例えばパートの
配偶者の預金残高が不自然に多額な場合などが例に挙げられる。ま
た、贈与された金銭について、それが適正に申告されている場合で
も、その預金通帳が被相続人によって管理されていたとすれば、そ
れは一種の名義預金と判断されて相続財産と見なされてしまうこ
とがあるので、注意が必要だ。
次いで上場有価証券。上場株式等で被相続人が配当金を受け取っ
ている場合、その株式は本来なら被相続人の財産だったのではない
かという視点から、証券会社等に照会がいくことがある。
また、上場会社の重役、同族会社オーナー、医師、弁護士など相
対的に所得が高い職種の場合、税務調査の確率は高くなる。特に上
場会社の社長の相続で、税理士などが適正に申告している場合で
も、慣例として実地調査をするようだ。これらの職種で財産が不自
然に少ない場合には、当然のことながらその理由が徹底的に調べら
れる。さらには、預金等の頻繫な出入り、評価が複雑な不動産や自
社株等の財産なども焦点に上げられる。
相続税の基礎控除が大幅に引き下げられて、相続税大増税時代を
迎えている中、申告誤りで多額な追徴課税を請求されるケースが増
えている。相続税の申告は慎重さが求められると共に、いざという
時のために税務調査の眼の付け処を理解し、適切な対応を心掛けて
おきたい。