個人事業者が棚卸資産を自家消費した場合
消費税と所得税で取り扱いの差に留意!
消費税は、原則として、実際に受領した課税資産の譲渡等の対価の額が課税標準となる。例外として、対価を得ない取引に対して、対価を得て行う資産の譲渡とみなして課税される場合と一定の取引でその対価の額が時価に比べて著しく低い場合には、その時価を対価の額とみなして課税される。これには、個人事業者の自家消費と法人がその役員に対して行う資産の贈与及び著しく低い価額による譲渡がある。
個人事業者の自家消費とは、個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業用に使用していたものを家事のために消費又は使用することをいう。
例えば、個人商店の八百屋さんが売れ残りの野菜を家族で食べるための料理に使う場合や、商品・製品・材料などの棚卸資産をプライベートで消費する場合が典型的な例だが、商品を知人に定価の30%の低額で販売したときなども定価との差額が自家消費となる。
個人事業者が自家消費を行った場合は、その資産を消費又は使用した時のその資産の価額、すなわち時価に相当する金額を課税標準として消費税が課税される。
ただし、棚卸資産を自家消費した場合は、その棚卸資産の仕入価額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上の金額を対価の額として確定申告したときはその取扱いが認められている。
注意したいのは、棚卸資産を自家消費した場合の所得税との関係だ。棚卸資産を自家消費した場合、所得税基本通達の取扱いによると、通常の販売価格の70%相当額(仕入価額以上)を記帳の上、同額を事業所得の計算上総収入金額に算入し、所得税の確定申告をしなければならないとされている。所得税は70%相当額であるから、消費税も同様と一見考えがちだが、所得税と消費税で課税基準が異なるため、留意したい。