不動産売買契約における違約金の取扱い
譲渡に関する経費として収入金額から控除
土地や建物などの不動産を譲渡する場合、一般的な慣習として譲渡価額に応じた一定の手付金を受け取って不動産売買(譲渡)契約を締結する。ところが実際には、契約を締結しても、その後他に有利な条件で買い受ける人が出てくれば、前の譲渡契約を解約して譲渡することも少なくない。この場合は、手付金の返還はもちろんのこと、契約不履行の損害賠償として違約金を支払わなければならないことになる。
そこで、税務上の取扱いとして、この違約金が譲渡所得計算上の経費として認められるかどうかが問題となってくる。
この点、所得税法では、山林所得又は譲渡所得に係る所得税の課税の対象となる資産について、譲渡契約を締結した後、契約を解除して違約金を支払い、その資産を第三者に譲渡した場合は、山林所得、譲渡所得の計算上譲渡に関する経費に算入することを認めるとしている。
つまり、これらの違約金は、譲渡に関する経費として、譲渡のために直接支出する周旋料、登録料のほか、譲渡のために借家人を立ち退かせる場合のいわゆる立退料などと同様に、譲渡所得を計算する場合に、その収入金額から控除できることになる。ただし、違約金額の中に手付金の返還金に相当する金額が含まれている場合には、当然その手付金額を除いて違約金のみが譲渡に関する経費として認められることになる。
また、逆のケースで、不動産売買契約を締結しても、買主側が残代金の支払いをできないこともある。このような場合、買主は手付金を放棄することによって、不動産売買契約を解除することができる。手付金の放棄によって買主側が契約を解除する場合は、手付金が経費(個人事業主)や損金(法人)になる。手付金の金額は、不動産会社が売主の場合では、売買代金の2割以内と決まっているが、それ以外では特段の定めはなく、相場としては売買代金の5%~10%が多いという。