2、共有対策
先代の相続で不動産や自社株式を共有で相続した、といった共有関係を整理したいケースはよくある。その対策の一つとして、信託契約により共有者の一人が、管理・処分を行い、それが収益物件であれば賃料収入を、共有者で案分し取得することもできる。
ケース4
・唯一の不動産(アパート)を均等相続させつつ、財産を塩漬けにすることなく、将来の売却もスムーズにできるようにしたい。また、自分の判断能力が低下した後も、このアパートの収益で施設費、生活費をまかないたい。
長男に信託財産を託すという信託契約を結ぶ
【信託内容】
委託者 父
受託者 長男
第1受益者 父
第2受益者 長男、次男、三男(1/3ずつ)
信託財産 アパート及び金銭(管理費等として)
信託契約終了事由 夫の死亡及び不動産の売却完了
帰属権利者 長男、次男、三男(1/3ずつ)
〈効果〉
・父が管理能力喪失又は死亡した場合でも、長男が単独で、自分の判断 により、修繕・売却が可能
・信託財産から発生した財産も、信託財産とみなされるため、不動産の収益から、施設費や生活費をまかなうことができる。
・唯一の財産であることから、父の死後子の共有になることは不可避だったが、父の意向通り塩漬けにすることなく、運用・財産の分割が可能になる
・「父の死亡及び不動産の売却完了時」を信託終了とすることで、父の死亡後も、今まで通りの財産管理が可能
親亡き後
ケース5
自分が死んでも、障害のある長女がちゃんと暮らしていけるようにしたい。長男は近所に住んでおり、今までも長女の面倒をよく見てくれているので、長男へ長女の世話を任せたいという父の意向がある
長男へ自宅及び金銭(長女生活費等)を託し、信託契約を結ぶ
【信託内容】
委託者 父
受託者 長男
第1受益者 父
第2受益者 父死亡後は 長女
信託財産 自宅、金銭
信託契約終了事由 父及び母の死亡
帰属権利者 長男
※信託契約とは別に、長女の成年後見人に、父及び専門家の2名が就任する
(成年後見制度との併用は必須)
〈効果〉
・長女の面倒だけでなく、父の老後のサポートも補える
・父が長女の面倒を見ることができなくなった場合でも、長男が代わりに財産を長女へ定期的渡したり、長女の身の回りの世話も行うことができるので安心
・成年後見人を選任することで、財産管理や、日常の支払い、身上監護を任せられるので、長男への負担が軽くなる
・また、父の生存中に選任しておき、父と専門家の二人で就任しておくことで、死後の財産処理もスムーズに行うことができる