税理士法人吉井財務研究所

賃貸住宅の評価に影響する空き室の有無
相続税

賃貸住宅の評価に影響する空き室の有無

課税時期に空き室が多いほど評価額が上昇

 

相続税対策に賃貸アパートやマンションなどの賃貸住宅が有効といわれている。更地に賃貸住宅を建てることによって、土地の相続評価額を低くできるからだ。金融資産を持っていれば、不動産(賃貸住宅)に変えることが有効な相続税対策になる。不動産の課税価格は、時価とは異なり、利用状況に応じて定められた相続税評価額がベースになる。一般に、相続税評価額は時価よりも低いため、このギャップを活かすことで節税につながるわけだ。

一方で、貸家住宅は、不動産市場の情勢の悪化等により空き室が増えると、その評価額に影響が出てくる。賃貸アパート等の評価は、建物部分は貸家として「自用家屋としての価額-自用家屋としての価額×借家権割合×賃貸割合」、また、その宅地部分は貸家建付地として「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」というそれぞれの算式で評価額を算出する。

賃貸割合とは、家屋の各独立部分の床面積の合計に占める、課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計の割合をいう。例えば、同面積の部屋が20室あるアパートのうち4室が空き室の場合、賃貸割合は80%となる。このアパートの自用家屋の価額を2億円、借家権割合を30%とすると、貸家の評価額は1億5200万円(2億円-2億円×30%×80%)となり、満室の場合の評価額1億4000万円より1200万円高くなる。

貸家建付地の評価においても同様で、空き室が多いほど賃貸割合が小さくなるため、自用家屋又は自用地の価額から控除できる額が少なくなり、評価額は上がってしまう。

ただし、アパート等の各独立部分の一部が課税時期(相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において一時的に空き室となっていたにすぎないと認められるものは、課税時期においても賃貸されていたものとみなされる。