相続税に係る上場株式等の物納要件見直し
来年度税制改正に金融庁が要望
令和6年度税制改正大綱で、いわゆる「老老相続」や相続財産の
構成の変化など相続税を取り巻く経済社会の構造変化を踏まえ、納
税者の支払能力をより的確に勘案した物納制度となるよう、延納制
度も含め、物納許可限度額の計算方法について早急に検討し結論を
得る、とされたことを受け、金融庁は令和7年度の税制改正におい
て相続税に係る上場株式等の物納要件等の見直しを要望した。
相続税は金銭による一括納付が原則。相続した財産が不動産中心
で金銭が少ないという場合に、特例として「延納」、例外として「物
納」という制度が認められている。物納は、延納による金銭納付が
困難な場合の例外措置で、それが可能な財産については、順位をつ
けて規定されている。不動産や国債・地方債、上場株式等が第一の
順位となるが、境界の曖昧な土地や所有権に関して争いのある財産
などは、除外される。
物納については、延納によっても金銭で納付することができない
場合、という要件があり、税務署長の許可を得る必要があることか
ら、その利用実績はきわめて限定的だったことや、相続財産となっ
た上場株式等は原則、相続時点の時価で評価されるところ、株価の
下落に備えて売却されるといったケースがみられ、国民の資産選択
に歪みを与えているという指摘がなされていた。
そこで、今回の金融庁の要望では、上場株式等の物納にかかる手
続きについて、納税者が利用しやすいよう特例を措置すること、ま
た、上場株式等について、相続税評価方法等の見直しを行うこと、
等が盛り込まれた。
その他、金融庁は、NISAの利便性の向上を図るため、NIS
Aに関する手続きの更なる簡素化・合理化や対象商品(ETF)の
要件の見直しなどを要望した。口座開設申込時の即日買付が可能に
なり、つみたて投資枠においてもアクティブETF(上場株式投信)
の要件整備等により利便性の向上が期待されている。